補聴器デコチップ開発話

補聴器デコチップは一人の難聴ユーザーとの出会いからスタートします。

2018年のあるとき、お世話になっている福祉施設の施設長さんから言われた一言がずっと心に引っかかっていました。

「車いすや杖はオシャレなものが出ているのに、どうして補聴器はダサいの?」

お話をよく聞くと高齢者の方は最初は車いすや杖を使う事に抵抗を感じる方が多いそうです。
しかしおしゃれな杖などをファッションの一つとして使ってみて、初めて便利さを実感して使うようになることが多々あるのだと。
補聴器も使ってみれば役に立つと思う人は沢山いるけれど、おしゃれじゃないので勧めにくいという事を言われました。

確かに補聴器は肌色などの地味な色が多く、「隠す」「目立たせない」事が第一になっています。
機能などはどんどんと進化していっても見た目の進化はまだまだ・・・
見た目の問題で補聴器を使いたいと思わない人がかなりの数いるのでは・・・と考えてからはずっと
どうすれば補聴器をもっとおしゃれに、楽しく使ってもらえるかを考えていました。

ネイルチップのように着せ替え出来るものが欲しい

補聴器をデコレーションして楽しむ事は一部の若い人の間では行われていました。
私の勤めている販売店は母体がイヤモールドを制作する会社です。
まず手始めにイヤモールドをオシャレにする事で楽しんで使ってもらえないだろうかと考えました。
それからはイヤモールドに様々なデザインをアートする「アートモールド」を作り、Instagramなどで発表していきました。

その時に補聴器本体にもアートをする「アート補聴器」も考えました。
モールドと補聴器本体をお揃いのアートで飾る事で、とてもおしゃれになりました。

しかしアート補聴器は結局は補聴器本体に直接アートをする状態です。
店舗に来ていただける方しか対応する事が出来ないため、もっとたくさんの方に補聴器でおしゃれを楽しんでもらうためにはどうしたらいいのか…日々試行錯誤を繰り返していました。

2019年5月に1人の難聴ユーザーからInstagramを通じてダイレクトメッセージが届きました。

色々とやり取りをしている中で「ネイルチップを取り換えて着せ替えするように、補聴器も着せ替え出来るものがあればいいのに」という事を言われます。

その一言をヒントに着せ替え出来るネイルチップの補聴器版アイテムを試作し始めます。

試作品完成

ヒントをもらってからは怒涛の勢いで試作を繰り返しました。
もともとイヤモールド制作の手伝いをしていたので、それらをヒントにあれこれと試してみました。

作っては失敗し、また作っては失敗し・・・をくり返しながらもヒントをもらってから1週間で試作品が出来上がりました。

実際にユーザーに使ってもらい、いろいろと検証をしたいと考えモニター協力者を募ります。
複数名のモニターに協力をしてもらい使い心地やハウリング、汗の影響などを確認してもらいました。

音響的な部分での確認なども繰り返し、改良を重ねていきました。
そして試作品ができてから2ヵ月後にテスト販売を開始しました。

デコチップの思わぬ効果

補聴器デコチップを使ってもらう当初の目的は「補聴器のイメージアップ」でした。
しかし実際にユーザーに使用してもらったところ思わぬ効果が表れます。

それはユーザーの心理的な変化です。

補聴器ユーザーは潜在的に補聴器を隠したいと考える方が多く、使っている補聴器を見せないようにしています。
しかし補聴器デコチップを使うと「補聴器を見せて自慢したくなる」という気持ちになるようです。

また中途失聴の方などは喪失感が強く、自信を失ってしまう方も多くいます。
しかし補聴器デコチップを使う事で気持ちに変化が起こり、今まで言えなかった事を言える勇気がわいてきたり自信を取り戻す人が出てきました。

お子様などは補聴器を嫌がり外してしまう事が多く、親御さんは困ってしまうという話が多く聞かれます。しかし補聴器デコチップを使うようになってから子供が進んで補聴器を使ってくれるようになったという嬉しい声が届いてくるようになりました。

補聴器をおしゃれにする事で、ユーザー自身の後ろ向きだった気持ちが明るく前向きになっていくという事例が次々と届くようになりました。

相互理解の懸け橋に

健聴の方で難聴に興味も関心もなかった人が、補聴器デコチップをしり「これは何??」というところから難聴や補聴器について興味を持ってくれるきっかけになりました。

難聴者の困りごとは見えにくく伝わりにくい事が多く、まず難聴や補聴器に興味を持ってもらわなければ伝えることすらできないものです。
例えばアイドルやお笑いなどのDVDや映画などは、字幕がないものは内容がわかりません。
好きなアーティストや俳優の出ている作品を見たくても内容が理解できないのです。

このような「見えないバリア」が難聴者にはたくさんあり、訴えようにも見えないため伝わりにくくなかなか改善が進まないという事が多くあります。
補聴器デコチップを知る事で難聴や補聴器の事を知るきっかけになり、今まで知らなかった難聴者の困りごとを知る一つのきっかけとなっています。

目標は健聴者が羨ましがるアイテムにすること

補聴器デコチップはさまざまなメディアに取り上げられています。
補聴器を着せかえできる補聴器専用のアクセサリーは世界初の商品です。

デコチップを付けた人は皆さん笑顔になり、胸を張って補聴器を見せびらかします。
隠したいという気持ちから「もっと見て!」という気持ちに変化します。

難聴ユーザーしか楽しむことのできない特別なおしゃれです。
健聴者が難聴者を羨ましいと思うような、そんなオシャレなアイテムに補聴器を持っていきたい。
ひとりでも多くの方に楽しく前向きに補聴器や人工内耳を使ってもらいたい。

補聴器デコチップには夢と希望がたくさん詰まっています。
1人でも多くの人に笑顔を届けたいと日々製作をしています。